2026年9月12日

「インフルエンザにかかったら、高熱だけでなく下痢や吐き気、腹痛まで出てきた…」
「熱は下がったのに、お腹のゴロゴロや胃の不快感がなかなか治らない…」
インフルエンザといえば、「発熱や咳、喉の痛み、筋肉痛・関節痛、倦怠感」などの症状を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
しかし、インフルエンザでは、こうした呼吸器症状や全身症状に加えて、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状がみられることがあります。
では、なぜ主に呼吸器に感染するインフルエンザで、胃や腸の症状が起こるのでしょうか。
今回は、インフルエンザで消化器症状が起こる理由、感染性胃腸炎との違い、薬の副作用との関係、そして回復期に気をつけたいポイントについて、最新の知見をもとにわかりやすく解説します。
なぜインフルエンザでお腹を壊すのか?
インフルエンザで下痢、吐き気、嘔吐、腹痛などの消化器症状が起こる原因には、インフルエンザウイルスに対する身体の免疫反応や炎症、腸内環境の変化など、いくつかの要因が関係しています。
つまり、インフルエンザによるお腹の不調は、単に「発熱で体力が落ちたから」というだけではありません。
ウイルス感染に対する身体の反応が、胃や腸の働きにも影響することで、消化器症状が現れると考えられています。
インフルエンザによる炎症が胃腸に影響する
インフルエンザに感染すると、身体はウイルスを排除するために免疫反応を起こします。その際、さまざまな炎症性サイトカインなどの物質が産生されます。
こうした免疫反応は、感染の主な場である呼吸器だけでなく、全身のさまざまな組織や臓器に影響を及ぼすことがあります。
消化管もその影響を受けることで、胃腸の働きが一時的に変化し、吐き気や腹痛、下痢などの症状につながる可能性があります。
肺と腸は密接に関係しています
肺と腸は離れた場所にありますが、免疫細胞やサイトカイン、腸内細菌などを介して互いに影響し合っています。
このような肺と腸のつながりは、近年「腸・肺相関(Gut-Lung Axis)」と呼ばれ、医学研究で注目されています。
インフルエンザなどの呼吸器感染症では、腸内細菌叢のバランスや働きが一時的に変化することが報告されています。
こうした腸内環境の変化が、腸管の免疫機能や腸の働きに影響し、下痢などの消化器症状につながる可能性も考えられています。ただし、どの程度影響しているのかについては、現在も研究が進められている段階です。
インフルエンザウイルスが腸に感染しているの?
「インフルエンザで下痢になるなら、ウイルスが腸に感染しているのでは?」と思われるかもしれません。
実際に、インフルエンザに感染した方の便から、ウイルスやウイルス由来の物質が検出されたという報告があります。また、インフルエンザAウイルスと消化管との関係についても研究が進んでいます。
しかし、便からウイルスが検出されたことだけで、ウイルスが腸管で増殖し、それが下痢や腹痛の原因になっているとは判断できません。
現在では、インフルエンザによる消化器症状には、ウイルスそのものの作用だけでなく、感染に対する全身の免疫反応や炎症、腸内環境の変化など、複数の要因が関係していると考えられています。
インフルエンザと感染性胃腸炎の違い
冬場は、インフルエンザとノロウイルスなどによる感染性胃腸炎が同じ時期に流行することがあります。
「発熱と下痢があるけれど、インフルエンザなのか胃腸炎なのかわからない」ということもあるでしょう。
両者にはそれぞれ特徴がありますが、症状だけで完全に区別することはできません。
ここでは、一般的な症状の傾向を比較してみましょう。

インフルエンザは「全身症状」が目立ちやすい
インフルエンザでは、突然の発熱に加えて、倦怠感、頭痛、筋肉痛・関節痛などの全身症状が目立ちやすいのが特徴です。
咳や喉の痛み、鼻水などの呼吸器症状を伴うことも多く、こうした症状に加えて、下痢や吐き気、嘔吐、腹痛などの消化器症状がみられることがあります。
感染性胃腸炎は「嘔吐・下痢」が中心
一方、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎では、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状が中心となります。
ノロウイルスでは、突然の吐き気や嘔吐がみられ、その後に下痢や腹痛が続くことがあります。
発熱することもありますが、インフルエンザのような強い全身症状や呼吸器症状はあまりみられません。
「熱+下痢」だから胃腸炎とは限りません
注意したいのは、インフルエンザでも下痢や嘔吐、腹痛などの消化器症状が起こるということです。
そのため、「熱があって下痢をしているから、胃腸炎だろう」と症状だけで判断することはできません。
反対に、インフルエンザの流行時期でも、嘔吐や下痢などの消化器症状が中心であれば、感染性胃腸炎の可能性があります。
症状が現れた順番や発熱の有無・程度、咳や喉の痛みなどの呼吸器症状、周囲の感染状況などを総合的に判断することが大切です。
また、インフルエンザと感染性胃腸炎が同時に起こることもあります。
どちらの場合も「脱水」に注意
インフルエンザでも感染性胃腸炎でも、下痢や嘔吐が続く場合には、脱水に注意することが大切です。
特に、何度も吐いて水分がとれない、尿量が明らかに減っている、口の中が乾いている、強いふらつきがあるなどの場合には、脱水が進んでいる可能性があります。
「インフルエンザか胃腸炎か」を判断することにこだわらず、症状が強い場合や水分が十分にとれない場合には、早めに医療機関へご相談ください。
自宅療養時の注意点とセルフケア

インフルエンザに伴って下痢や吐き気、腹痛などの消化器症状がある場合は、まず脱水を防ぎ、体調に合わせて無理なく休養することが大切です。
水分を少量ずつこまめに補給する
下痢や嘔吐が続くと、水分だけでなく、体に必要な塩分なども失われます。そのため、一度にたくさん飲むのではなく、少しずつこまめに水分を補給しましょう。
下痢や嘔吐が多い場合には、水分と塩分を補うことができる経口補水液(OS-1など)が適しています。症状が軽い場合には、水やお茶、スープなどでも構いません。
尿量が明らかに減っている、口が強く渇く、立ちくらみやふらつきがあるなどの場合は、脱水が進んでいる可能性があります。このような場合は、早めに医療機関へご相談ください。
食事は無理をせず、食べられるものから
下痢や吐き気があるときは、無理に食事量を増やす必要はありません。
一方で、症状があるからといって、食事を完全に控える必要もありません。
食べられるようであれば、おかゆ、うどん、スープなど、消化のよいものを少量ずつ摂るとよいでしょう。
脂っこい料理や刺激の強いもの、アルコールなどは、症状が落ち着くまでは控えることをおすすめします。
下痢止めは自己判断で使用しない
下痢があるからといって、すぐに下痢止めを使用する必要はありません。
特に、発熱を伴う下痢、血便、強い腹痛などがある場合には、感染性腸炎などの可能性もあるため、ロペラミドなどの下痢止めを自己判断で使用することは避けましょう。
胃の不調がある場合は、薬にも注意する
インフルエンザの治療に使用する抗ウイルス薬の一部では、吐き気や嘔吐などの消化器症状が副作用としてみられることがあります。
例えば、オセルタミビルでは悪心・嘔吐がみられることがあり、食後に服用することで、こうした症状が軽減する可能性があります。
また、ロキソプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、胃粘膜障害や胃痛などを起こすことがあります。
胃痛や吐き気が強い場合には、自己判断で薬を追加したり変更したりせず、医師や薬剤師にご相談ください。
熱が下がった後も胃腸症状が続く場合は?
インフルエンザの発熱や咳が改善した後も、下痢や腹痛、吐き気、食欲不振などの症状が続くことがあります。
こうした場合には、インフルエンザによる一時的な体調変化だけでなく、薬の副作用や脱水、感染性胃腸炎など、別の原因が重なっていないかを確認することも大切です。
また、感染症をきっかけとして腸の働きに変化が残り、下痢や腹痛などが長引く「感染後過敏性腸症候群(PI-IBS)」がみられることもあります。
ただし、インフルエンザ後に消化器症状が長引いた場合に、すべてがPI-IBSによるものとは限りません。症状が続く場合には、ほかの消化器疾患なども含めて原因を確認することが大切です。
まとめ
このような症状がある場合は、早めに受診しましょう
✅水分が十分に摂れない、または尿量が明らかに減っている
✅血便や黒い便が出ている
✅強い腹痛が続いている
✅嘔吐が続き、水分を摂っても吐いてしまう
✅インフルエンザの症状が改善しても、下痢や腹痛、食欲不振などが続いている
「インフルエンザが治れば、そのうち治るだろう」と自己判断せず、症状が長引く場合や気になる症状がある場合には、医療機関にご相談ください。
当院の特徴

・専門医による検査・診察
日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会の専門医が丁寧な胃カメラ・大腸カメラを行います。
・土曜日、日曜日の胃カメラ・大腸カメラに対応
平日はお仕事や家事でお忙しい方でも、週末を利用して無理なく検査を受けていただける体制を整えています。
・検査当日の「日帰りポリープ切除」が可能
大腸がんの原因となるポリープが見つかった場合は、検査時にその場で切除し、将来のがんを予防します。
