2026年7月09日

健康診断で最も受診を躊躇されがちな結果の一つが、「便潜血陽性」です。
「2回のうち1回だけだから大丈夫だろう」「どうせ痔のせいだし、症状もないから様子を見よう」と、そのまま放置していませんか?
今回は、内視鏡専門医の視点から、便潜血陽性が出た際の大腸がんの確率と、「2回のうち1回でも陽性なら、なぜ大腸カメラを受けるべきなのか」をわかりやすく解説します。

そもそも「便潜血検査」とは?
便潜血検査とは、便の中に目に見えないレベルのわずかな血液(潜血)が混じっていないかを調べる検査です。
現在、大腸がん検診などで広く採用されているのは「免疫学的便潜血検査(FIT)」という方法です。
この検査は、人間の赤血球に含まれる「ヘモグロビン」だけに正確に反応するため、食事(肉類の血液など)の影響を受けることなく、大腸からの微量な出血を高い精度で検出することができます。
検査方法は、ご自宅などで任意の2日間の便を少しずつ採取するだけです。体への負担が一切なく、非常に簡便に行える点が大きなメリットです。
便潜血が「陽性」になる原因とは?
便潜血検査で陽性となる原因は、決して”大腸がん”だけではありません。
主に以下のような疾患や原因が挙げられます。
・大腸ポリープ
・大腸がん
・痔(痔核や切れ痔など)
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)
・薬剤の影響(痛み止めであるNSAIDsなどの服用による消化管出血など)
陽性になる確率と、精密検査で見つかる病気
便潜血検査を受けると、全体の約5〜7%(100人のうち5〜7人程度)が「陽性」と判定されます。
陽性と判定された方が、精密検査(大腸カメラ検査)を受けた場合に何が見つかるか、その割合(確率)は以下の通りです。


「大腸がんの確率は3%程度か、じゃあ大丈夫だな」と思われたかもしれません。しかし、これは医療の現場においては「極めて高い確率」です。約30人に1人は大腸がんが見つかっている計算になります。
「2回のうち1回だけ陽性」を放置してはいけない理由
健診結果を見て、「2回中1回だけ陽性だったから、たまたま痔の血が混じっただけだろう」「もう一度検便をやり直して、陰性なら大丈夫ですよね?」と、ご相談を受けることは少なくありません。
しかし、答えは「NO!!(必ず要精密検査が必要です)」です。
1回でも陽性となった時点で、大腸カメラによる精密検査が必要であることに変わりありません。
なぜ「やり直し(再検査)」をしてはいけないのか?
日本の大腸がん検診で「2日法(2回採便)」が標準となっているのには、明確な理由があります。
それは、大腸がんや大腸ポリープは、毎日必ず出血しているわけではなく、出血したりしなかったりを繰り返すという特徴があるためです。
そのため、不安だからともう一度検査を受けて、その結果が「陰性」だったとしても、それは病変がないことを証明するものではありません。
前回は出血していた病変が、今回はたまたま出血しなかっただけという可能性があるからです。
1回陽性と2回陽性での「大腸がん」の発見率

実際に、便潜血検査が1回のみ陽性だった場合と、2回とも陽性だった場合の大腸がん発見率は、左図のとおりです。
2回とも陽性だった方が大腸がんが見つかる確率は高くなりますが、1回のみ陽性であっても大腸がんが見つかる方もいらっしゃいます。
「1回だけだから大丈夫」と自己判断せず、必ず大腸カメラによる精密検査を受けることが大切です。
精密検査で見つかる「大腸ポリープ」とは?
便潜血検査で陽性となった方のうち、約3〜4割の方で大腸ポリープが見つかります。
大腸ポリープとは、大腸の粘膜にできる「いぼ」のように盛り上がった病変の総称です。
大腸ポリープは、大きく分類して「腫瘍性ポリープ」と「非腫瘍性ポリープ」があります。このうち、腫瘍性ポリープには、放置すると徐々に大きくなり、将来的に大腸がんへ進行する可能性があるものが含まれます。
「大腸腺腫」の段階で切除するメリット
腫瘍性ポリープの代表が、「大腸腺腫」です。
大腸腺腫は、いわば大腸がんの前段階ともいえる病変で、日本人の大腸がんの多くは、この腺腫が数年かけて徐々に大きくなり、やがてがんへ進行すると考えられています。そのため、がん化する前の腺腫の段階で切除することで、将来の大腸がんを予防できる可能性が高まります。
つまり、大腸カメラによる精密検査は、大腸がんを早期に発見するだけでなく、将来の大腸がんを未然に防ぐことができるという大きなメリットがあるのです。
まとめ
便潜血検査で「陽性」と判定されると、大腸がんへの不安や、精密検査(大腸カメラ)への不安・抵抗を感じてしまうかもしれません。
しかし、これまでご説明したように、陽性の原因は大腸がんだけでなく、大腸ポリープや痔であることも多くあります。
特に大腸ポリープが見つかった場合は、大腸カメラの検査時にその場で切除する「日帰りポリープ切除」が可能です。これにより、将来の大腸がんを予防できる可能性が高まります。
「2回のうち1回だけだから」「きっと痔のせいだから」と自己判断で放置したり、検便をやり直して安心しようとしたりすることはおすすめできません。
「たかが1回の陽性」と軽く考えず、大腸がんを早期に発見し、さらには予防するための機会と捉え、大腸カメラによる精密検査をご検討ください。
当院の特徴
専門医による検査
日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会の専門医が丁寧な大腸カメラを行います。
土曜日・日曜日の大腸カメラに対応
平日はお仕事や家事でお忙しい方でも、週末を利用して無理なく検査を受けていただける体制を整えています。
検査当日の「日帰りポリープ切除」が可能
大腸がんの原因となるポリープが見つかった場合は、検査時にその場で切除し、将来のがんを予防します。
